若者による若者のための観劇レビュー

23歳が、23歳なりの視点で、同年代の若者に舞台の素晴らしさを、鑑賞した舞台のレビューを通して伝えていきたいブログです

『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』を観劇した感想(ネタバレあり)

第23回目のレビューは、『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』です。

 

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本作は、生田斗真×菅田将暉のダブル主演という豪華な顔ぶれな作品ということで非常に注目されております。

 

 

会場は世田谷パブリックシアター

座席数も約600席と少なく、全体的にステージとの距離の近い中劇場です。

 

 

大劇場じゃないからこそ生み出せる会場の独特な空気感と役者から直接伝わるパワーを感じました。

 

 

本作は、シェイクスピアハムレット」に端役として登場し、最後には「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」の一行で片付けられてしまった2人組”ロズとギル”を主人公にした、劇作家トム・ストッパードが書き上げたハムレット外伝です。

 

 

もちろんハムレットを知らない状態で観劇しても十分面白い作品ではあるのですが、ハムレットのスピンオフ的な作品のため、これから観劇される方はハムレットを読んでいくことを強くおすすめします。

メインストーリーであるハムレットを知っていることで、”ロズとギル”の置かれている状況や時間軸など理解度が高まり、より一層作品に没入できるのではないかと思います。

 

 

生田斗真菅田将暉によるロズとギル

 

ある日、ハムレットの学友であったローゼンクランツとギルデンスターンは国王に突如呼び出され、ハムレットの様子がおかしいので理由を探ってほしいと頼まれます。任務を遂行しようと躍起になる一方、本人たちの理解が追い付く前にどんどんとハムレットのストーリーは進んでいくのです。なすすべもなく、彼らは自分たちの運命に翻弄され、最後に待ち受けている”死”をただひたすらに待っているしかないのでしょうか。

 

 

最後には死に向かっていく殺伐とした哀しい物語のはずなのに、ブラックコメディとして描いている非常に面白い戯曲です。

 

 

ロズとギルのテンポの良い掛け合いにクスッと笑ってしまうシーンが満載で、そこが本作の大きな魅力のひとつとなっています。

 

 

数奇な運命を辿るローゼンクランツとギルデンスターンを演じるのが、生田斗真さんと菅田将暉さん。

 

ロズとギルはいつも一緒であり、自分の名前と相手の名前を間違えるほど。

そんな二人組を、様々なメディアに引っ張りだこの大人気俳優であるお二人が演じるということで、とても楽しみにしておりました。

 

 

何事にも直感的に動く”ボケ”担当のローゼンクランツを生田斗真さん、

物事を深く読み解き、状況を把握しようとする”ツッコミ”担当のギルデンスターンを菅田将暉さんが演じておりました。

 

 

2人ともセリフ量が尋常じゃない!!とにかく凄まじいです。

しかも舞台の幕が下がるまで、一度も舞台上からはけることがないのです。10分休憩が2回ありますが、第3幕まで計2時間半ずっと2人は会話を繰り広げ続けます。

 

 

生田斗真さんは声色や仕草の一つ一つまで意識してロズというキャラクターを構築しているように見てとれ、役者としてとにかく器用な方なんだなぁと。

 

菅田将暉さんはギルというキャラクターの性格上、論理的なセリフが多く、ロズのはちゃめちゃな発言を訂正するという役柄のため、とにかくセリフが多いのですが、終始早口で喋り続けるあのエネルギーに圧倒されました。

 

 

 

戯曲は哲学的であって、言葉遊びが多く、とても難しい。2人の会話は、幾重にも言葉が積み重なって層となり、混沌として話が全く進まないのです。同じようなセリフが多いなかでそれぞれの心情を汲み取り、真っすぐなエネルギーで斗真さんと菅田さんが丁寧に演じておられました。

 

 

 

2人を翻弄するハムレット

 

そんな二人のストーリーの裏では、ハムレットのストーリーが進んでいきます。主人公であるハムレット林遣都さんが演じております。

高尚であるはずのハムレットがロズとギル2人の視点から描かれているので、父上の亡霊と話をしているはずのハムレットが、亡霊とではなく独り言を言っていると思われていたりと、少しダサいキャラクターになっているというか・・・(笑)

本家とは違ったハムレット像となっていて、かなり面白かったです。

 

ちょっと調子に乗っている風の演技が林遣都さんにぴったりとハマっていました。

 

 

 

ロズとギル2人の旅路は人が生まれて死ぬまでの人生そのものだと、演出家の小川さんはおっしゃっています。それがどういうことなのか、この作品を観れば分かるはずです。

 

彼らは時が経つにつれて、自分たちが何をするべきなのかも、どこに向かうべきなのかも、自分が一体何者なのかも分からなくなります。

 

人はいずれ死ぬけれど、なぜ自分達がなぜ死ぬ運命なのか、悩んでも悩んでも分かりません。でもこの疑問は、人間が生きている限り付きまとう、答えのない永遠の疑問です。

 

ロズとギルの言葉は自分達に言い聞かせているようで、私たち観客に対して言っているように聞こえます。実際、私たち観客に対して声を荒げるようなシーンもあり、劇場という空間を利用して、2人のいる世界に引きずり込まれるのです。

 

 

戯曲ならではの演出

 

戯曲は演出によってイメージがかなり変わります。

 

今回の舞台上にはシンプルな大きい黒い階段があるだけで、セットというセットはありません。そして始まる直前までスタッフさんが舞台上では照明の点検をしていたり、掃除機をかけていたりしていたのですが、それすらも演出であって、今思うと、“そこからすでに舞台は始まっていた”のです。

 

開演時間になっても始まる気配がなく、舞台右端に置いてあったレンガ調の大きな板をスタッフが片付けるように左手に運んでいきます。

真ん中で一度止まり、また動き出すと板の後ろから生田斗真さんと菅田将暉さんが現れ、なんともしれっと舞台が始まったのです。

 

2人が現れてから、客席の照明が暗くなるという通常の始まり方ではない始まり方をしており、この演出には驚きでした。

セットらしいものがなく、ステージの装置や骨組みが見えている状態。世界観を作りこんでいないような空間であえて見せているのが、かなり秀逸でした。

 

 

 

最後、ローゼンクランツとギルデンスターンはハムレットの筋書き通り死んでしまいますが、殺されるシーンはありません。「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」の一言だけで表現されます。

 

しかし最後、真っ暗なステージの中、ライトが菅田将暉さんをひとり照らし、この運命に対するギルの心の叫びを話すのです。そのなんとも言えない表情と情景にロズとギル2人の哀しい運命が映し出されておりました。

 

 

 

戯曲は非常に難しく、苦手意識を持ちやすい。

私も最初は古典戯曲の内容に理解が追い付けず苦手でした。

 

しかし、抽象的な分、様々な解釈ができるのも戯曲の素晴らしい点。そう思うと苦手意識はなくなり、むしろ今は積極的に観劇しています。

 

本作品をきっかけに、皆様も様々な戯曲に触れてみてはいかがでしょうか!

 

 

 

【公演情報】

 

 

シス・カンパニー「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」

 

 

出演者:生田斗真菅田将暉林遣都半海一晃、安西慎太郎、田川隼嗣、林田航平、本多遼、章平、長友郁真、松澤一之、立石涼子小野武彦

 

 

公演日:2017年10月30日(月)~11月26日(日) 世田谷パブリックシアター

 

 

観劇日:2017年10月31日(火)19:00公演