第17回目のレビューは、サスペンス×コメディー「デストラップ」です。
本作品は、ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズや実写版「銀魂」を手掛けた福田雄一監督が脚本・演出をされていることで注目されています。
サスペンス色が強い戯曲に、福田さんがどのような"笑い"の要素を入れ込んでくるのか、かなり注目しておりました。
主人公、売れない劇作家シドニー・ブルーフ(片岡愛之助)のもとに届いた一冊の脚本「デストラップ」。これはシドニーの教え子クリスフォード・アンダーソン(橋本良亮)の処女作で、シドニーに添削を求め、送ってきたものだった。
この作品の質の高さにシドニーはクリスフォードを殺害し、作品を奪う計画を立てる。しかし、事態は思わぬ方向へ・・・!
裏切りに次ぐ裏切り。どんでん返しが何度も起こり、予測不可能な展開へ。
舞台転換が一回もない、ワンシチュエーションの密室劇。
そこで濃密な会話劇が繰り広げられます。
そして第1幕の終わりで衝撃のシーンが。「え、うしょでしょ!?」「どういうこと!?」
頭の上にクエスチョンマークが出たまま第2幕に入ります。
そして、クリスチャードが作り上げた「デストラップ」を観劇しているのか、それとも彼らの生き様を観ているのか、ストーリーが進むにつれて混乱してくるのです。
「デストラップ」がこの作品ではふたつのものを表わしているというように思いました。
サスペンス要素が強いですが、随所で福田流の笑いが入ります。
その"笑い"の部分を大いに担っているのが、佐藤仁美さんと坂田聡さんです。
ふたりともアドリブの量がすごい!!自由度が高すぎます(笑)
福田さんが演出されているので、いつ笑いが来るか!とわくわくしていたので、彼らがステージ上でぶっ飛ばしているとき、観客も大いに笑いまくっていました。
坂田さんは弁護士役としてシドニーの家に来るのですが、来た瞬間から面白い。橋本くん(クリスフォード)がボケ倒すんです。涼しい顔でボケまくる、そのギャップがかなり面白いです。そして坂田さんがつっこみまくる。とにかく拾いまくる。
坂田さんはこの約20分ほどの出番しかないらしく、舞台上からはけることをためらってました。床で寝てましたもん(笑)
片岡愛之助さんに向かって「うわ~きっかけぜりふきた~」とか「このセットがさ。あ、セットって言っちゃった」って!そんなせりふ舞台で聞いたことない!!(笑)
しかしコメディーシーンが盛り上がるほど、シリアスなシーンの恐怖が引き立ちます。
最後には何が真実なのか、誰が裏切っているのか、わからなくなります。
最後の、片岡愛之助さんと橋本良亮さんのシーンは本当に予測不可能でした。
サスペンスなので殺人も起こるのですが、何故か気持ちがずーーーんとならない作品となっています。コメディー要素も随所にあり、かなり笑える作品にもなっています。
地方公演もありますので、ぜひ皆さん観に行ってみてください!!
【公演情報】
『デストラップ』
演出・脚本:福田雄一
東京公演:2017年7月7日(金)~7月23日(日) 東京芸術劇場
静岡公演:7月26日(水) 静岡市民文化会館
愛知公演:8月1日(火) 刈谷市総合文化センター
兵庫公演:8月3日(木)~6日(日) 兵庫県立芸術文化センター
観賞日:7月22日(土)13:00公演