若者による若者のための観劇レビュー

24歳が、24歳なりの視点で、同年代の若者に舞台の素晴らしさを、鑑賞した舞台のレビューを通して伝えていきたいブログです

舞台『チャイメリカ』を観劇した感想(ネタバレあり)

第37回のレビューは、英国社会派戯曲『CHIMERICA  チャイメリカ』です。

 

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田中圭さん主演、そして日本初上演作品ということで非常に注目されている作品です。

 

本作は、中国の天安門事件を題材に描いたフィクション作品。

 

海外事情も事件のことも全く分からないので、あえて知識を入れないまま観劇したのですが、現代にも通じる普遍的な問題を扱っている作品だと、そう感じました。

 

 

 

二つの国の演出

 

 

 

本作で登場するのはアメリカと中国。

 

この二つの国を場面によって行き来していたため、場面展開がかなり多く、なんと38もの場面で構成されているとのことです。(公式パンフレットより)

 

転換が多い分、ステージの上・下を分け、回転舞台も取り入れることで次の場面へと流れるように繋いている演出が印象的でした。

 

ステージ上には無駄な装飾が一切なく、必要最低限のセットのみが配置してあり、それぞれの場面を表現。

 

無駄な装飾がなく、ステージ上は黒で統一されていることで、ひとつひとつの台詞が舞台上に浮かび上がってくるような雰囲気がありました。

 

 

 

ジョーとヂァン・リン

 

 

 

主人公の記者、ジョー演じるのは田中圭さん。

 

昨年末は舞台「サメと泳ぐ」でも主演を務め、舞台への出演が続いております。

 

ジョーはアメリカ人記者で、天安門事件の写真を撮影したことをきっかけに、1枚の写真に翻弄されることとなります。

 

自分の覚悟を自分自身で裏切らないために、目に見えない事実を追いかけ続けるジョーの記者としての圧倒的な力強さやまっすぐさを田中圭さんが全身で演じておりました。

 

 

 

そして、中国に住むジョーの旧友ヂァン・リン役は満島真之介さん。

 

とにかく、満島さんの迫真の演技に心奪われました。

 

ジョーとヂァン・リンが一緒にいるシーンはほんの数回しかなく、ほとんどが別々のシーンで物語は進みますが、彼らの人生はそれぞれの人生に大きく関わっており、最後にジョーはヂァン・リンに関する衝撃の事実を知ることになります。

 

 

ヂァン・リンは天安門事件に関係するある過去に縛られ、そして過去を引きずり、物語が進むごとに憔悴し、心を閉ざしていってしまうキャラクターです。

 

そんなヂァン・リンを満島真之介さんは丁寧に演じており、この物語はフィクションのはずなのに、私が観ているヂァン・リンは現実でしかない、そう感じてしまうくらい説得力のある演技でした。

 

 

満島真之介さんの出演されている舞台は何度か観劇したことがあり、そして観劇するたびに満島さんの繊細かつ大胆な演技に感動しています。

 

 

 

色の演出

 

 

ステージがほとんど黒で統一されている一方、背景となる壁は液晶画面になっており、

場面に合わせて色が変わっていました。

 

感情を映す鏡のように、赤やグレーに色変わりし、視覚的にも状況描写の補足という役割を果たしておりました。

 

 

非常に難しい作品で、濃密な会話劇という印象でしたが、決して歴史上の問題を題材としているだけの作品ではないと感じました。

 

 

【公演情報】

 

世田谷パブリックシアター×パソナグループ

『CHIMERICA  チャイメリカ

 

 

作:ルーシー・カークウッド

 

演出:栗山民也

 

出演:田中圭満島真之介倉科カナ眞島秀和瀬戸さおり池岡亮介・・・etc

 

 

東京公演:2019年2月6日(水)~2月24日(日)  世田谷パブリックシアター

愛知公演:2019年2月27日(水)~2月28日(木)  東海市芸術劇場

兵庫公演:2019年3月2日(土)~3日(日)  兵庫県立芸術文化センター

宮城公演:2019年3月6日(水)  多賀城市民会館 大ホール

福岡公演:2019年3月10日(日)  福岡市民会館

 

 

観劇日:2019年2月23日(土)18:30公演

 

 

舞台『罪と罰』を観劇した感想(ネタバレあり)

第36回のレビューは、三浦春馬さん主演「罪と罰」です。

 

 

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本作はロシアのドフトエフスキーの長編文学を題材とした作品で、舞台の脚本・演出はイギリスの演出家、フィリップ・ブリーンが務めております。

 

 上演時間は3時間超えという、ストレートプレイの中ではかなり長い超大作でしたが、息つく間もない展開がいくつも待ち受けておりました。

 

 

 

三浦春馬の演じるラスコリニコフ

 

 

三浦春馬さん演じるラスコリニコフは、自らを選ばれし者と錯覚し、”正義”のためならと人を殺めてしまう貧乏な青年。

 

自身の中に大きな野望を秘めていて、自己を過大評価してしまうラスコリニコフは、一方で、自らの罪に怯え、良心と野望との狭間で感情が揺れ動くという非常に難しい役どころです。

 

 

 

全編通して、三浦春馬さんの演技力、気迫に圧倒されました。

あまりの迫力に、演じているというより別人格としてそこに存在しているのではないかというような感覚になりました。

 

 

 

 

その空間の中でラスコリニコフは自らの正義を貫き、人を殺める。しかし、自らの過ちにおののき、気絶するシーンが前半は多く描かれておりました。

 

 

気絶するシーンは暗転し、目を覚ますと明転する。

目を覚ます度に別場面へ転換しているのだが、転換が早いため一つの長いシーンを観ているかのように感じました。

 

 

いくつかの蛍光灯が薄暗く光っている舞台上には家具や生活道具が積み重なるように無造作に置かれ、その間を演者がめまぐるしく動いていく。

 

 

全編通して驚いたのは、演者や演奏者は終始ステージからはけることなく、群衆としてステージ上に存在していたことです。

 

 

時には民衆として、時にはキャラクターの感情の起伏を表現する者として、作品の中に存在しており、かなり印象的な演出だと感じました。

 

 

階段状のステージを縦横無尽に演者が動く一方で、チェロやクラリネットの演奏者も同時にステージ上で演奏するという面白い演出もありました。

 

演奏者が衣装を着て、演者と同じようにステージ上にいて、そして演者のすぐそばで演奏するという舞台ならではの生感がありました。

 

 

哲学的で難しい作品ではありましたが、それぞれの人間関係や感情、人と人との心理戦を濃く表現した作品だと感じました。

 

 

【公演情報】

 

Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019

罪と罰

 

 

原作:フョードル・ドストエフスキー

 

上演台本・演出:フィリップ・ブリーン

 

出演:三浦春馬大島優子南沢奈央、松田慎也、真那胡敬二、冨岡弘、塩田朋子、粟野史浩、瑞木健太郎、深見由真、奥田一平、山路和弘立石涼子勝村政信麻実れい・・・etc

 

東京公演:2019年1月9日(水)~2月1日(金)Bunkamura シアターコクーン

 

大阪公演:2019年2月9日(土)~2月17日(日)森ノ宮ピロティホール

 

観劇日:2019年1月19日(土)13:00公演

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台『いまを生きる』を観劇した感想(ネタばれあり)

第35回目のレビューは、佐藤隆太主演、舞台「いまを生きる」です。

 

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1989年に米俳優ロビン・ウィリアムズ主演で映画化された不朽の名作を、日本で初舞台化した本作。全寮制の名門男子校に赴任してきた破天荒な英語教師ジョン・キーティングが、厳格な規則に縛られている学生たちに、詩を通して生きることの素晴らしさを伝えていく、心温まる学園ドラマです。

 

 

風変わりな教師、ジョン・キーティング

 

 

 

主人公のジョン・キーティングを演じたのは、佐藤隆太さん。

 

2か月前も篠原涼子さんと舞台「アンナ・クリスティ」に出演されていたので、立て続けの舞台でお忙しいです。

(舞台「アンナ・クリスティ」の観劇レビューは第32回に掲載)

『アンナ・クリスティ』を観劇した感想(ネタバレあり) - 若者による若者のための観劇レビュー

 

 

キーティングの授業は、情熱的で時にユーモラスでかなり風変わり。最初は抵抗感を表していた生徒ですが、少しづつ生徒の心を動かしていきます。

 

佐藤隆太さんの熱血教師といえば、ドラマ「ROOKIES」がまず思い浮かびます。

ROOKIESで佐藤隆太さんが演じた川藤先生とキーティング先生は、とても似ているような・・・。どちらもまっすぐな信念を持つ教師役で、非常に適役です。

 

キーティングが自由に自分らしく生きる素晴らしさを説くため、生徒に嘘偽りなくぶつかっていく様は、とてもパワフルで知性に溢れていました。

 

 

本作を観終わって感じたことは、”いまを生きる”という本作品のタイトルの本当の意味。自分の人生に複雑に絡んでくる学校や友達や家族との関係に悩み、大人からの圧力や規律に耐えなければならない日々を送る生徒に、キーティングは「自分らしく生きろ」と伝えます。

 

 

 

“生きる”という最も身近で最も難解な行為を、論理的に目を見てまっすぐ生徒へ伝えるキーティングは非常に賢明な人間であると感じました。

それと同時に、生徒から見えないところでは悩み苦しみ、キーティング自身も生きることにもがきながら”今”を生きているシーンが見受けられ、自分らしく生きることの難しさが伝わってきます。

 

 

そんなキーティングを佐藤隆太さんは非常に力強く、時に繊細に演じられておりました。

 

 

生徒の心が動く瞬間

 

 

 

キーティングの言葉に心を動かされ、自分は芝居がしたいんだという夢に向かって進むことを決意した生徒、ニール・ペリーは親の反対を押し切って舞台に出演します。しかし、父親から夢を捨てろと痛烈に反対されたニールは憔悴し、命を絶ってしまうのです。

 

 

ニールの最期は、彼を神聖な空間へ誘うかのごとく暗闇のなかに白く浮かび上がらせるようなライトの演出が象徴的でした。

 

 

命を絶った者と、残された者。

 

いまを自分らしく生きろと言ったことで、命を絶ってしまった少年。

 

キーティングは責任を背負わされ、学校をクビになります。でも、教え子たちは分かっている。ニールが亡くなったのは先生のせいじゃない、先生からはとても大切な事を教わったと。

 

生きることは残酷で、でも、生きることは素晴らしい。

そんなことを私も教えられたような気がしました。

 

 

 

 

ステージの周りを約230度客席が囲んでいる劇場で、私はかなり右側、ほとんどステージ真横の位置から観劇しました。

 

真正面から観劇するのとはかなり見え方が異なるだろうなぁという印象を持ちました。

 

舞台上には、8本の可動式の柱が立っており、シーンが変わるごとに柱の位置が変わる仕組み。

空間を区切ったり、または、柱を左右に下げることで一つの大きな空間へ変えたり、シンプルだがスピーディーに次のシーンへ移動するので見やすい演出でした。

 

小道具も少なく、できるだけシンプルに、演者だけがステージ上にいるような見せ方だったのが印象的でした。

 

 

また、本作は劇中の音楽を生演奏しており、舞台後方でオーケストラが演奏しておりました。登場人物の心情を曲で表現しているようなシーンが多く登場し、言葉数は多くなくとも、人物の心情が客席に伝わりやすく、ゆったりと流れていくシーンの数々に音楽が寄り添っていました。

 

 

時代背景も国も異なる作品ですが、今の日本にも必要な教えが沢山盛り込まれており、観終わったあと、心が熱くなる作品でした。

 

 

【公演情報】

 舞台「いまを生きる」

 

 

原作:トム・シュルマン

上演台本・演出:上田一豪

 

出演:佐藤隆太宮近海斗(Travis Japan/ジャニーズJr.)、永田崇人、七五三掛龍也(Travis Japan/ジャニーズJr.)、中村海人(Travis Japan/ジャニーズJr.)、浦上晟周、田川隼嗣、冨家規政、羽瀬川なぎ、大和田伸也

 

 

東京公演: 2018年10月5日(金)~24日(水) 新国立劇場 中劇場

 

 

観劇日:2018年10月8日(月・祝) 12:00公演

舞台『サメと泳ぐ』を観劇した感想(ネタバレあり)

第34回目のレビューは、田中哲司×田中圭W主演の舞台、『サメと泳ぐ』です。

 

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本作は、ハリウッド映画界の裏側を描いたブラックコメディです。

 

 

上演時間は3時間という、ストレートプレイの中でもかなりの大作でした。映画界を舞台に、それぞれの登場人物が抱える欲望や思惑を手に入れるため、究極の騙し合いが壮絶に繰り広げられました。

 

 

大物プロデューサーの”バディ”と新人アシスタントの”ガイ”

 

 

 

性格は最悪だが、数々の映画をヒットさせてきた大物プロデューサーの”バディ”を演じたのは、田中哲司さん。ひときわ舞台上で大きな存在感を放っていました。

わがままで傲慢で横柄な態度、だけど映画界では頭の切れる存在である”バディ”というキャラクターに説得力がありました。

 

 

映画好きで脚本家を夢見て上京し、バディの新人アシスタントとして彼の下で働き始めた”ガイ”を演じたのは田中圭さん。

バディに毎日のように侮辱的な言葉を浴びせられながらも、彼の無理難題に必死に応えようとする純朴なガイをとても繊細に初々しく演じておりました。

 

 

以前から田中圭さんの演技が大好きで、彼の出演している舞台はほとんど観劇しています。

 

今回も作品の最初と最後で全く性格が異なる、振り幅の大きな役柄でした。

 

”ガイ”という青年が追い込まれていく様を様々な表情で魅せ、落ちてでも這い上がる雄々しい一人の男を美しく演じていたのが印象的でした。耐えて、裏切られて、耐えて、そして最後には暴走する感情がなんとも恐ろしくリアルで、ふと微笑む笑顔に狂気性を感じました。

 

 

それぞれの思惑。究極の騙し合い。

 

 

 

物語の前半はバディとガイとの関係性が、彼らの仕事を通して描かれていました。

気に入らないことがあったらすぐ怒鳴り、物を投げつけるバディ。バディからの酷い振る舞いにひたすら耐えるガイ。絵に描いたようなパワハラを見せられているのであまりいい気分ではありませんでした(笑)

 

 

そこに現れる一人の女性。

 

バディに新作の映画企画を売り込みに来た映画プロデューサー、”ドーン”。男の世界で駆け上がっていく強い女性”ドーン”を野波麻帆さんが演じておりました。

 

野波さんの喋り方がドーンにぴったりで、一度決めたことは曲げない意志の強さが、喋り方から伝わってきます。

 

ガイとドーンはのちに恋人関係になりますが、その関係すら危ぶまれる計画をバディは動かし始めます。

 

 

 

物語の後半は、騙し合いや裏切りがメインです。

 

 

自分の私利私欲のために、ガイやドーンを利用しようとするバディの目が印象的でした。

言葉とは、人の心をいとも簡単に動かしてしまう、恐ろしい武器だと痛感します。

 

物語の後半になるにつれて、ガイの心の中に止められない感情が生まれてきます。

そして、なんと、ガイはバディを「殺そう」と決意するのです。

 

 

 

拘束されたバディと狂気性に満ち溢れた別人のようなガイ、二人が対峙するシーンはかなり痺れました。

 

 

薄暗い照明の中、フードを被り拳銃を突き付けるガイにはバディへの憎しみしかなく、何か少しのきっかけで引き金を引いてしまうのではないかという緊張感がありました。

 

薄く笑みを浮かべながらバディを痛めつけるガイの姿は楽しんでいるようで、瑞々しい毒と狂気にまみれながら、純粋で美しいガイを田中圭は全身全霊で演じておりました。

 

 

 

前半と後半で作品の雰囲気が変わり、かつ、テンポ感よくストーリーが進むので、あっという間の3時間でした。

 

 

 

ジャズと照明

 

 

 

骨組みが少し見えているようなセットで、2階建てにすることで上下に動きのある演出でした。

 

 

ジャズやクラシックが場面展開における一種のスパイスように使われ、場面が変わるごとにテンポの良いジャズが大音量で流れて次のシーンへ進むという、スピード感のある転換でした。ジャズが流れると同時にカラフルな照明が舞台上を照らし、ある種の”アメリカ映画っぽさ”のようなものも感じました。

 

 

重たいテーマですが、人間同士の心理ゲームを見ているかのようで、現実のような非現実を味わいました。

 

 

公演数はあまり多くはないですが、本作は地方公演があります!

 

皆様ぜひ見に行ってみてください!

 

 

 

【公演情報】

 

 

関西テレビ放送開局60周年記念 「サメと泳ぐ」

 

原作:ジョージ・ホアン

 

演出:千葉哲也

 

出演:田中哲司田中圭野波麻帆、石田佳央、伊藤公一、小山あずさ、千葉哲也

 

 

東京公演:9月1日(土)~9月9日(日) 世田谷パブリックシアター

仙台公演:9月11日(火) 電力ホール

兵庫公演:9月14日(金)~9月17日(月・祝) 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール

福岡公演:9月20日(木)~9月21日(金) ももちパレス

愛媛公演:9月28日(金) 松山市総合コミュニティセンター キャメリアホール

広島公演:10月4日(木) JMSアステールプラザ 大ホール

 

 

観劇日:2018年9月2日(日)18:00公演

    2018年9月9日(日)13:00公演  東京千秋楽

『コインロッカー・ベイビーズ』を観劇した感想(ネタバレあり)

第33回のレビューは、音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』です。

 

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本作は2年ぶりの再演で、主演は前回に引き続きA.B.C-Zの橋本良亮さんと河合郁人さん。

 

 

しかも今回は公演期間を分けて二人がそれぞれハシとキク両方の役を入れ替えて演じるという上演です。

 

 

 

対照的なハシとキク

 

 

 

本作の主人公は二人の少年です。

 

 

ハシとキクと呼ばれている彼らは生まれてすぐコインロッカーに捨てられ、唯一生き残った孤児たち。兄弟ではないが、養父母に兄弟として引き取られ、育てられました。

 

そんなハシとキクは性格が正反対。

 

ハシは内気で口数も少なく気弱、一方キクは反抗的かつ暴力的。

正反対だけど、誰よりも相手のことを知っている、唯一心を許せる相手。

 

 

公演の前半は、気弱なハシを河合郁人さん、暴力的なキャラクターであるキクを橋本良亮さんが演じました。

 

 

そして、後半公演では配役を入れ替えて、気弱なハシを橋本良亮さん、暴力的なキャラクターであるキクを河合郁人さんが演じました。

 

 

私は配役が入れ替わる前半後半どちらの公演も観劇したのですが、振り幅の大きい対照的なキャラクターをどちらも繊細かつ大胆に演じられていて、お二人の底知れない演技力に驚くばかりでした!

 

 

橋本さんのキクは、反抗的な性格の中にも時折優しさが見えるキク。

 

河合さんのキクは、橋本さんのキクと異なり、反抗的・強気というような要素が前面に出ているようなキク。

 

 

 

一方で、キクと正反対の性格、ハシを演じたお2人はというと、

河合さんのハシは、子供っぽさが時折見え隠れし、ナイーブな心の動きがより濃く描かれていたと思います。

 

そして、橋本さんのハシは、ハシの持つ優しさも表現しつつ、河合さんが演じられたハシよりも狂気性に満ち溢れ、後半になるにつれて精神異常者としての振る舞いが凄すぎて、鳥肌が立ちました。

 

 

前半のキャスティングは今回の上演が初で、後半のキャスティングは2016年の初演の際と同じキャスティングです。

 

それぞれキャラクターへのアプローチが少しずつ異なっていて、解釈の違いが演技に繋がってきており面白かったです。

 

 

音楽劇としてのコインロッカーベイビーズ

 

 

 

コインロッカーベイビーズの原作を読んだのですが、展開が早くて登場人物の心情変化も複雑で難しいという印象です。

その複雑さを音楽で表現し、音楽劇として魅せた点は非常に面白い演出だと思いました。

 

また、ハシは歌手という設定なので歌うシーンも多く、音楽劇として違和感なくコインロッカー・ベイビーズの世界観に入り込むことができます。

原作の象徴的なシーンや台詞はそのままに、場面転換が多い作品なのでとにかくスピード感がありました。

 

 

入れ替え制のキャストでどちらも観劇することができ、橋本さん・河合さんお2人のそれぞれの演技力の素晴らしさを噛みしめることができました!

 

 

【公演情報】

 

 

音楽劇「コインロッカー・ベイビーズ

 

脚本・演出:木村信司

 

出演者:橋本良亮(A.B.C-Z)、河合郁人A.B.C-Z)、山下リオシルビア・グラブ、秋山大河(MADE/ジャニーズJr.)、福士申樹(MADE/ジャニーズJr.)、ROLLY・・・etc

 

 

 

東京公演:2018年7月11日(水)~2018年7月29日(日)TBS赤坂actシアター

 

大阪公演:2018年8月11日(土)~8月12日(日)豊中市立文化芸術センター・大ホール

 

富山公演:2018年8月18日(土)~8月19日(日)オーバード・ホール

 

 

観劇日:2018年7月18日(水)18:30公演

    2018年7月29日(日)13:30公演  東京千秋楽公演

 

 

 

 

『アンナ・クリスティ』を観劇した感想(ネタバレあり)

第32回目のレビューは、「アンナ・クリスティ」です。

 

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本作品は、篠原涼子さんが13年ぶりに出演される舞台ということで非常に注目されております。

 

最初に感想を言いますと、非常に素晴らしかった。完全な私見ですが、ここ最近観劇したストレートプレイの中で一番良かったです!

 

出演者が少ない分、ひとりひとりの存在感が大きくかつ重要で、登場時人物の心情が濃く描かれていました。

 

だからこそ感情移入しやすく、そして、とにかく皆さんが大熱演で、物語にぐっと引き込まれました。

 

 

 

篠原涼子演じるアンナ・クリスティ

 

 

 

 

本作はノーベル文学賞受賞作家ユージン・オニール1921年に発表し、ピューリッツァー賞を受賞した傑作戯曲。

 

日本では初上演となる本作品。登場人物の複雑な心情を言葉巧みに描き、家族とは、恋人とは、そして自分自身の意味を問う作品です。

 

 

篠原涼子さん演じるアンナ・クリスティがとにかく妖艶で美しく、女性としての力強さや、また、孤独に対する恐怖心を乱暴な言動の裏に匂わせ、とても繊細に演じられていました。ひとつひとつの仕草がアンナという女性の過酷な生い立ちを想像させ、胸が痛みます。

 

 

私は観劇の際、どうしても役柄というよりかは”俳優の演技”として観てしまいます。しかし、篠原さんのアンナはアンナそのもので、”篠原さんの演技を観ている”というよりかは、”アンナの生き様を見ている”という感覚でした。あまりこういう感覚になったことがないので、私自身とても驚いていますが、それだけ篠原さんがアンナを大熱演されていたからだと思います。

 

 

アンナを取り巻く二人の男

 

 

 

アンナと15年ぶりに再会する父親はたかお鷹さん。

 

アンナに一目惚れして、アンナと恋に落ちる船乗りを佐藤隆太さんが演じられました。

 

 

たかお鷹さんの存在感、渋み、お見事でした。

アンナとの絶妙な距離感が言葉のトーンに含まれ、舞台上に漂うのです。

 

 

アンナの恋人となるマットを演じた佐藤隆太さんは、無骨で荒々しい男性を好演。

台詞もストレートかつ膨大で、エネルギッシュ。仕草や動きも乱暴ですが、アンナに魅了される男を表現豊かに演じられていました。

 

 

舞台の後半、アンナが抱えてきた苦しみが言葉となって吐き出されたとき、台詞のやり取りに緊張感が増し、それそれのキャラクターに感情のうねりが生まれました。

 

 

アンナの告白によってマットとの関係性が崩れ、その後、二人の葛藤が激しくぶつかり合う。

悶え苦しみながらも現実を受け入れようとするマットとアンナを演じるお二人がとにかく素晴らしかったです。

 

 

秀逸な演出と美術

 

 

 

酒場、船の上、部屋など、場面転換は多くはなかったですが、美術を作りこんでいないにも関わらず雰囲気をがらりと変えてしまった演出には驚きました。

 

転換では緞帳ではなく薄いカーテンを使って流れるように転換を行い、それぞれの場面に連続性を生み出していました。

 

霧やタバコの煙なども象徴的に使われ、無駄がなく素敵な演出だったと思います。

 

 

 

静かで流れるように、そして俳優さんの迫力ある好演が光る素晴らしい作品でした!

 

 

 

【公演情報】

 

 「アンナ・クリスティ」

 

 

作:ユージン・オニール

 

翻訳:徐 賀世子

 

脚本・演出:栗山民也

 

出演者:篠原涼子佐藤隆太、たかお鷹、立石涼子原康義福山康平、俵和也、吉田健悟

 

 

東京公演:2018年7月13日(金)~2018年7月29日(日) よみうり大手町ホール

 

大阪公演:2018年8月3日(金)~2018年8月5日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

 

 

観劇日:2018年7月26日(木)19:00公演

『ニンゲン御破算』を観劇した感想(ネタバレあり)

第31回目のレビューは、松尾スズキ作・演出『ニンゲン御破算』です。

 

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大人計画主宰の松尾スズキさんが中村勘三郎さんのために書きおろした作品を15年ぶりに再演、しかも、当時主演の勘三郎さんの役を今回は阿部サダヲさんが演じております。

 

大人計画の作品ではほぼ見ない時代劇ものの舞台。

 

勘三郎さんのために書き下ろしたということもあって、歌舞伎のような古典要素がたくさん盛り込まれていました。実際の歴史上の人物や歴史的事件をストーリーに組み込み、ひとつの時代劇エンターテインメント作品に昇華した、松尾さんの発想力に感動しました。

 

 

阿部サダヲ主演版「ニンゲン御破算」

 

 

 

今回の主役、芝居に魅了され歌舞伎の戯作者を志す”加藤実之介”というキャラクターを阿部サダヲさんが演じています。

 

この方の演技は唯一無二。しなやかで、かつパワフルに、どんな役でも魅力的に演じられる大好きな役者さんの一人です。

 

今回の役はほぼ出ずっぱり&喋りっぱなしの大変な役どころ。

 

実之介は自分の書いた歌舞伎の脚本を人気狂言作家の鶴屋南北松尾スズキ)に読んでもらい、弟子入りを志願するというシーンから始まり、「鶴屋南北に作品を読んでもらっている世界」と、自分の書いた「作品の中の世界」の二つの世界が並列に進んでいるという面白い展開でした。

 

そのため、阿部サダヲさんはこの二つの世界を行ったり来たり。どちらの世界も加藤実之介というキャラクターは変わらないのですが、セリフも多いし、展開もとにかく早くて、出ていないシーンがほとんどありません。その分、阿部サダヲという役者のパワーを感じられる喜びで胸が熱くなりました。

 

 

 

ぶっ飛び時代劇エンターテインメント

 

 

  松尾さんの描く世界観が好きで、作・演出を手掛けられる舞台はよく観劇しています。

今回も、ステージに沢山の驚く仕掛けがありました。

 

ステージ上には邦楽の演奏者の方々がおり、シーンに合わせて生演奏が行われ、時代劇の雰囲気をより一層盛り上げておりました。

 

阿部サダヲさんと岡田将生さんが2016年ダブル主演した、松尾スズキさん作・演出「ゴーゴーボーイズ・ゴーゴヘブン」でも同じくステージ上で邦楽を演奏していました。)

 

 

 

そして驚いたのが、ステージ左右に二つ、プールのように水を張っているセット。

 

そこに演者が落ちたり、飛び込んだり、はたまたそこから出てきたり!

舞台において、水を使った演出はあまり見ないのですが、ここまで大量の水、というかプールを演出に取り入れてしまうとは驚きです。

 

 

水しぶきがあがる舞台というのも珍しいですし、全身ずぶ濡れの役者が出てくるのもかなり新鮮で、観ていて面白かったです!

 

 

 

豪華で個性的な役者陣

 

 

 

とにかく豪華で個性的な役者が勢ぞろいの贅沢な作品でした。

 

15年前に阿部サダヲさんが演じていた、侍に憧れるマタギの”灰次”を今回は岡田将生さんが、そして灰次の兄を荒川良々さん、その兄弟の幼馴染”お吉”を多部未華子さんが演じておりました。

 

そして脇を固めるのが大人計画の面々。

 

皆川猿時さん、平岩紙さん、杉村蝉乃介さんなどなど。

阿部サダヲさんを筆頭に、アドリブ入れまくって、本筋と違うところで時間延びるし、大人計画の面々のアドリブに翻弄されて笑いをこらえきれていない岡田将生さんと多部未華子さんが何とも可愛らしいし、とにかく笑いました。

 

 

3時間超えの大ボリューム超大作です!

7月1日の東京公演の後は、大阪公演がございますので気になっている方はぜひ。

とにかく、凄いもの観た!という気持ちになります!

 

 

 

【公演情報】

 

 

 

シアターコクーン・オンレパートリー2018 「ニンゲン御破算」

 

 

作・演出 松尾スズキ

 

出演:阿部サダヲ岡田将生多部未華子荒川良々皆川猿時小松和重村杉蝉之介平岩紙顔田顔彦少路勇介田村たがめ、町田水城、山口航太、川上友里、片岡正二郎、家納ジュンコ、菅原永二、ノゾエ征爾、平田敦子松尾スズキ ・・・etc

 

 

 

東京公演:2018年6月7日(木)~7月1日(日)  Bunkamuraシアターコクーン

 

大阪公演:2018年7月5日(木)~7月15日(日)  森ノ宮ピロティホール

 

 

観劇日:2018年6月23日(土)18:30公演