若者による若者のための観劇レビュー

24歳が、24歳なりの視点で、同年代の若者に舞台の素晴らしさを、鑑賞した舞台のレビューを通して伝えていきたいブログです

『ニンゲン御破算』を観劇した感想(ネタバレあり)

第31回目のレビューは、松尾スズキ作・演出『ニンゲン御破算』です。

 

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大人計画主宰の松尾スズキさんが中村勘三郎さんのために書きおろした作品を15年ぶりに再演、しかも、当時主演の勘三郎さんの役を今回は阿部サダヲさんが演じております。

 

大人計画の作品ではほぼ見ない時代劇ものの舞台。

 

勘三郎さんのために書き下ろしたということもあって、歌舞伎のような古典要素がたくさん盛り込まれていました。実際の歴史上の人物や歴史的事件をストーリーに組み込み、ひとつの時代劇エンターテインメント作品に昇華した、松尾さんの発想力に感動しました。

 

 

阿部サダヲ主演版「ニンゲン御破算」

 

 

 

今回の主役、芝居に魅了され歌舞伎の戯作者を志す”加藤実之介”というキャラクターを阿部サダヲさんが演じています。

 

この方の演技は唯一無二。しなやかで、かつパワフルに、どんな役でも魅力的に演じられる大好きな役者さんの一人です。

 

今回の役はほぼ出ずっぱり&喋りっぱなしの大変な役どころ。

 

実之介は自分の書いた歌舞伎の脚本を人気狂言作家の鶴屋南北松尾スズキ)に読んでもらい、弟子入りを志願するというシーンから始まり、「鶴屋南北に作品を読んでもらっている世界」と、自分の書いた「作品の中の世界」の二つの世界が並列に進んでいるという面白い展開でした。

 

そのため、阿部サダヲさんはこの二つの世界を行ったり来たり。どちらの世界も加藤実之介というキャラクターは変わらないのですが、セリフも多いし、展開もとにかく早くて、出ていないシーンがほとんどありません。その分、阿部サダヲという役者のパワーを感じられる喜びで胸が熱くなりました。

 

 

 

ぶっ飛び時代劇エンターテインメント

 

 

  松尾さんの描く世界観が好きで、作・演出を手掛けられる舞台はよく観劇しています。

今回も、ステージに沢山の驚く仕掛けがありました。

 

ステージ上には邦楽の演奏者の方々がおり、シーンに合わせて生演奏が行われ、時代劇の雰囲気をより一層盛り上げておりました。

 

阿部サダヲさんと岡田将生さんが2016年ダブル主演した、松尾スズキさん作・演出「ゴーゴーボーイズ・ゴーゴヘブン」でも同じくステージ上で邦楽を演奏していました。)

 

 

 

そして驚いたのが、ステージ左右に二つ、プールのように水を張っているセット。

 

そこに演者が落ちたり、飛び込んだり、はたまたそこから出てきたり!

舞台において、水を使った演出はあまり見ないのですが、ここまで大量の水、というかプールを演出に取り入れてしまうとは驚きです。

 

 

水しぶきがあがる舞台というのも珍しいですし、全身ずぶ濡れの役者が出てくるのもかなり新鮮で、観ていて面白かったです!

 

 

 

豪華で個性的な役者陣

 

 

 

とにかく豪華で個性的な役者が勢ぞろいの贅沢な作品でした。

 

15年前に阿部サダヲさんが演じていた、侍に憧れるマタギの”灰次”を今回は岡田将生さんが、そして灰次の兄を荒川良々さん、その兄弟の幼馴染”お吉”を多部未華子さんが演じておりました。

 

そして脇を固めるのが大人計画の面々。

 

皆川猿時さん、平岩紙さん、杉村蝉乃介さんなどなど。

阿部サダヲさんを筆頭に、アドリブ入れまくって、本筋と違うところで時間延びるし、大人計画の面々のアドリブに翻弄されて笑いをこらえきれていない岡田将生さんと多部未華子さんが何とも可愛らしいし、とにかく笑いました。

 

 

3時間超えの大ボリューム超大作です!

7月1日の東京公演の後は、大阪公演がございますので気になっている方はぜひ。

とにかく、凄いもの観た!という気持ちになります!

 

 

 

【公演情報】

 

 

 

シアターコクーン・オンレパートリー2018 「ニンゲン御破算」

 

 

作・演出 松尾スズキ

 

出演:阿部サダヲ岡田将生多部未華子荒川良々皆川猿時小松和重村杉蝉之介平岩紙顔田顔彦少路勇介田村たがめ、町田水城、山口航太、川上友里、片岡正二郎、家納ジュンコ、菅原永二、ノゾエ征爾、平田敦子松尾スズキ ・・・etc

 

 

 

東京公演:2018年6月7日(木)~7月1日(日)  Bunkamuraシアターコクーン

 

大阪公演:2018年7月5日(木)~7月15日(日)  森ノ宮ピロティホール

 

 

観劇日:2018年6月23日(土)18:30公演

『薔薇と白鳥』を観劇した感想(ネタバレあり)

第30回目のレビューは『薔薇と白鳥』です。

 

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本作品はHey!Say!JUMPの八乙女光・髙木雄也のダブル主演ということで注目されています。

 

世界で最も有名な劇作家シェイクスピアと、もうひとりの天才イギリス劇作家クリストファー・マーロウの奇妙な出会いや友情、それぞれの葛藤を描いた作品です。

 

彼らの出会いがそれぞれの人生を大きく動かし、そして、国家をも揺るがす巨大な陰謀に巻き込まれることとなるのです。

 

本作品は、マーロウとシェイクスピアの辿る運命を当時の史実と実際の演劇エピソードを織り交ぜて描き出した作品です。

 

 

田舎の出身でのちに天才演劇作家となる青年、ウィリアム・シェイクスピアを髙木雄也さん、同年代の劇作家として活躍していた青年クリストファー・マーロウを八乙女光さんが演じております。

 

 

同年代の二人の天才劇作家

 

 

史実では、マーロウとシェイクスピアにはこの舞台のような関係性はなかったそうです。しかし、脚本を書かれたG2さんの手によって、二人のライバルとしての関係・友情という新しい2人の物語を描き出されました。

 

マーロウとシェイクスピアは同い年の劇作家。しかし生い立ちも性格も全く異なります。そんな二人がひょんなことから出会い、奇妙な友情が芽生え始めます。

 

 

自己中心的で怒りっぽく、面白そうなことは後先考えずやってしまうような好奇心を持っているマーロウは、八乙女光さんが演じております。

 

いつも問題ばかり起こし周囲の人を困らせる、そんな破天荒なキャラクターですが、八乙女さんが全身全霊で演じておりました。

 

 

 

一方で、田舎の出身で大学にも出てない無学の青年だが、何でもするりとこなして周囲の人に愛され、のちに天才劇作家となったシェイクスピアを演じたのは髙木雄也さん。

 

マーロウとは違い、受けの芝居が多いキャラクターですが、ちょっとした表情や仕草も丁寧に演じており、シェイクスピアの心の奥にある執念のような、しっかりとした芯を感じさせつつ、繊細に演じられており、非常に上手でした。

 

 

 

マーロウとシェイクスピアの運命

 

 

 

ある事件をきっかけに一度は離れ離れとなった二人ですが、数年後、また再会します。

 

 

そしてそこから二人の運命が複雑に絡み合っていくのです。

 

作品の終盤、マーロウとシェイクスピアが己の運命と向きあい、互いに気持ちをぶつけ合うシーンがあります。

 

 

彼らが求める未来は同じなのに、しなければならないことが全く違う。

 

 

お互いの気持ちを相手にどんな言葉で伝えたらよいのか・・・。

 

シェイクスピアの任務、そして、マーロウの思惑。

 

 

お互いがライバルであり友人である二人の青年は心の叫びを言葉にし、魂と魂でぶつかりあう。

 

 

彼らの涙と汗がその熱量を物語っていました。観ていて苦しく、心打たれるシーンでした。

 

ふたりの圧巻の演技に、息を飲むほどの緊張感が会場中を包みました。そこには八乙女光高木雄也ではなく、己の葛藤と向き合おとする二人の若き劇作家がいました。

 

 

 

 

そして、注目すべきはもう一つ!

 

武田真治さん、佐藤B作さん、町田マリーさんら二人を取り巻く周りのキャストの方々がとにかく素晴らしいです!!!

 

周りの方々の演技の安定感があってこそ、主演である早乙女さん・髙木さん2人の荒削りな、若くてパワーみなぎる演技がより一層輝いていた、と私は感じました。

 

 

八乙女さん髙木さんの演技を観劇したのは初めてですが、難しく、かつ膨大なセリフ量である戯曲をしっかりと演じられていて素晴らしかったです。

非常に見応えのある作品でした!

 

 

 

【公演情報】

 

 

『薔薇と白鳥』

 

脚本、演出:G2

 

出演者:八乙女光、髙木雄也、武田真治町田マリー、本折最強さとし、有川マコト、林田一高、鹿野真央、佐藤B作

 

東京公演:2018年5月27日(日)~6月24日(日)  東京グローブ座

大阪公演:2018年6月29日(金)~7月1日(日) 森ノ宮ピロティホール

 

観劇日:2018年6月17日(土)18:00公演

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『火花-Ghost of the Novelist-』を観劇した感想(ネタバレあり)

第29回目のレビューは、『火花-Ghost of the Novelist-』です。

 

 

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お笑い芸人ピースの又吉直樹さんの『火花』は、Netflixでドラマ化し、昨年には映画化もされましたが、今回とうとう舞台化されました!

 

小説の世界、と、作者の世界

 

 

まず、この舞台で驚きなのが原作者の又吉さんが出演しているということ。

『火花』の原作者であると同時に、この舞台の出演者として、原作者という役柄を演じている、という不思議な設定。

 

舞台上に原作者の又吉さんがいる。僕は原作者です、と言う。

そこに女優の観月ありささんが現れる。

観月ありささんは又吉さんに「火花」をください、という。

でも読んだことがないらしく、観月さんは『火花』を読み始める。

 

 

観月さんによって『火花』が語られ、登場人物が動き始める。

 

 

 

植田圭輔さん演じるスパークス徳永と、NONSTYLE石田さん演じる、あほんだらの神谷。

2人はどこまでも純粋で、まっすぐで、お笑いという世界でもがいてる。

まったく自分に嘘をついていない、そんな2人の姿が愛おしく、羨ましいとすら思いました。

 

小説の『火花』が目の前で繰り広げられた途中で、観月さんと又吉さんが出てきて、

小説の世界ではなく、作者の世界というか現実の世界(正確に言うと現実でもないですが・・・)に戻ってきます。

 

なかなか不思議な感覚です。

小説の中と外、ふたつの側面から『火花』を読んでいる感覚になりました。

 

 

徳永と神谷

 

 

『火花』の主人公である若手芸人の徳永は、若手俳優植田圭輔さん。

徳永が弟子入りする先輩芸人、あほんだらの神谷はNONSTYLEの石田さん。

石田さんは舞台にも多数出演しており、演技に定評があります。普段テレビで見るようなNONSTYLEの明るい漫才キャラクターとは打って変わり、あほんだらの神谷は破天荒で身なりも発言も尖ってる。

 

そんな神谷を石田さんは見事に演じ切っていました。

本当に凄い。喋り方や歩き方やちょっとした仕草まで、神谷さんにしか見えなかった。。。

 

 

石田さんはアドリブもふんだんに盛り込んでいて、終始演者さんを笑わせていました!

同じ舞台でも毎回違ったセリフがあったり、何回行っても楽しいんだろうな~と(笑)

 

 

石田さんの出演している舞台はほとんど観ているのですが、毎回濃いキャラクターを演じ切っていて、演技力素晴らしいなと思いました。

 

 

 

そして、徳永を演じている植田さん。

弱々しい風貌や、神谷への尊敬を、繊細な演技で演じていました。

 

 

 

スパークスの解散

 

 

徳永のコンビ、スパークスは解散することとなります。

相方の山下が結婚し、子供を授かったからです。コンビの解散は胸が苦しくなります。

 

 

スパークス解散前最後の漫才。

 

舞台上で最後の漫才をする2人。私たちはその瞬間から、『火花』を観劇しに来たお客さんではなく、スパークスの解散ライブを観に来たお客さんになります。

 

 

この漫才を観ている間、客席からは泣いている音、鼻をすする音が響いていました。

あんなにお客さんが泣いている舞台って今までなかったんじゃないかっているくらい皆泣いていました。お客さんも、スパークスも。

 

徳永の相方、山下を演じているのはお笑い芸人井下好井の好井さん。好井さんはNetflixのドラマでも山下を演じています。

ドラマの解散前の漫才も好井さん号泣しているんですけど、今回の舞台でも号泣していて。

泣き方が本物のようで。。。本当のコンビが本当に解散するときの涙のようで、私もつられてしまいました・・・。

 

 

役者ですね。芸人ですけど、凄い役者です。

 

 

 

 

舞台『火花』

 

 

 

 作中には登場しない、女優観月ありさが「観月ありさ」役としてストーリーテラーのように物語を進める一方、神谷の彼女「真樹」役として小説の中に登場したり、原作者の又吉さんが『火花』について話したり、小説を読むより深くまで『火花』の世界観を感じられる舞台となっていました。

 

 

 

5月には大阪公演もございます。皆様もぜひ行ってみてください!

 

 

 

 

【公演情報】

 

『火花-Ghost of the Novelist-』

 

原作:又吉直樹「火花」

 

出演者:観月ありさ植田圭輔石田明好井まさお又吉直樹・・・etc 

 

東京公演:2018年3月30日(金)~4月15日(日)  紀伊国屋ホール

大阪公演:2018年5月9日(水)~5月12日(土) 松下IMPホール

 

観劇日:2018年4月8日(日)14:00公演

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大人計画『さらば!あぶない刑事にヨロシク!』を観劇した感想

第28回目のレビューは、大人計画『さらば!あぶない刑事にヨロシク!』です。

 

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2016年に上演された「あぶない刑事にヨロシク!」の続編となる本作。

 

大人計画のメンバーによる、はちゃめちゃコメディーです!

 

 

 

皆川猿時荒川良々という怪物

 

 

 

とにかくこの二人の魅力にあふれた、二人の演技を存分に堪能できる本作。

 

設定もストーリーもはちゃめちゃで破天荒!でも、一つの作品として非常に魅力的な作品に仕上がっていました。

 

 

最初から最後までずっと笑っていた記憶しかありません。ただひたすらに面白い、それだけです!

 

 

皆川さんと荒川さんはバディとして事件を解決していきます。しかし、あぶない刑事のタカとユージようなバディ・・・にはならず、荒川さんの破天荒っぷりに終始引っ掻き回される皆川さん。

 

 

引っ掻き回される皆川さんがとっても大変そうなんですけど、見てて可愛らしいんですよね。破天荒な荒川さんもどこか憎めないというか・・・(笑)

 

 

2人で相撲をとったり、壁ドンしたり、歌ったり踊ったり・・・。

 

全く予期していないタイミングで予期していないことが起こり、どう展開していくのかがさっぱり分からないので、ずーとワクワクしていました。

 

 

観客参加型

 

 

今まで観劇した作品のなかで一番参加型な作品だったのではないかと思います。

 

 

荒川さんに「起立!」と言われて観客全員立ち上がったり(笑)、小道具が3つも配られたので劇中の様々なシーンで使用して参加しました。

 

 

 

演者の方々がステージから降りて、客席内を歩いたり走ったりするシーンもとても多く、近い距離感で観劇できたのが楽しかったですし、一緒に作品を作り上げている感覚があって、とても不思議な感覚でした!

 

 

 

個性派俳優集結 

 

 

皆川猿時さんと荒川良々さんはじめ、出演者全員のキャラクターがとてつもなく濃かったです。

 

 

大人計画池津祥子さん、近藤公園さん、杉村蝉乃介さん、とそうそうたる個性派メンバー。

 

 

また2年後くらいに続編を上演してくれないかなぁ・・・なんて淡い期待をしています!

 

 

【公演情報】

 

 

『さらば!あぶない刑事にヨロシク』

 

 

出演者:皆川猿時荒川良々池津祥子、杉村蝉乃介、近藤公園上川周作、早出明弘、本田ひでゆき、河原雅彦

 

 

公演日:2018年3月16日(金)~4月1日(日) 本多劇場

 

 

観劇日:2018年3月30日(金)19:00公演

 

舞台『密やかな結晶』を観劇した感想(ネタバレあり)

第27回目のレビューは、石原さとみさん主演の『密やかな結晶』です。

 

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本作は、石原さとみさんが4年ぶりに舞台へ出演されるということで非常に注目されております。

 

 

舞台は、とある島。

 

昨日まで存在していたものが今日は消滅している、物もその物にまつわる記憶も全てが跡形もなく消滅していってしまう不思議な島。

 

そんな不思議な島に住む小説家、“わたし”は両親を幼い頃に亡くし、おじいさんと二人暮らし。おじいさんは“わたし”が幼いころから共に暮らしているお世話係だが、見た目がずっと20歳のままで止まっている。

 

“わたし”は日々自宅で小説を書き、その原稿を受け取りに編集者“R氏”が時々家を訪ねてくる。そんな日々の生活の中で、今日も記憶が少しずつ消滅している。

 

ある日R氏は、誰にも言っていない秘密を二人に告白する。

 

自分は「記憶保持者」である、と。

 

記憶が消えていくはずのこの島で、稀に存在する、「記憶が消えない人間」。

記憶保持者は、島の秩序を守る謎の組織「秘密警察」によって連行されてしまう。

 

R氏の告白がきっかけとなって、3人の人間関係は大きく変わり、また、秘密警察が3人に近づき追いつめていく。

 

消滅が止まることなく進んでいくこの島で、それぞれの運命とともに3人はどう生きるのか・・・。

 

 

石原さとみ演じる小説家“わたし”と 20歳のおじいさん

 

 

石原さとみさん演じる“わたし”は落ち着いた大人の女性。記憶は日々消滅してしまうけれど、消滅したものに対して好奇心を抱き、想像を膨らませたりと、発想がとても豊かです。

 

また、R氏の告白がきっかけで、彼を必死に秘密警察から守ろうと、勇敢な一面も持ち合わせています。

 

そんな“わたし”を石原さとみさんはとても丁寧に演じておりました。

 

天真爛漫なキャラクターを演じられている時が多い印象ですが、今回は、小説を書きながら島でひっそりと暮らす女性。

ものが消滅しまうことや自分の運命を受け入れながらしっかりと生きている姿が彼女にぴったりと重なりました。

 

言葉のひとつひとつにしっかりと芯があり、強い。

 

R氏の告白によって、自分の気持ちに素直になり、彼を守り、彼のそばにいることが生きている意味なのだと強く感じます。

 

その気持ちが彼にも届き、彼を精神面から支える大きな存在となっていきます。

 

 

後半になるにつれて、鈴木浩介さん演じるR氏との2人きりのシーンが多く、繊細な会話劇が繰り広げられます。

 

消滅や警察の追手という運命から逃れられない不安や恐怖が、二人を引き裂こうとします。ですが、その恐怖にすら立ち向かおうとする二人の姿に、切なさと同時に胸がじわーっと温かくなったことを覚えています。

 

 

 

若手俳優村上虹郎さんが演じたのは20歳のおじいさん。

確かに言葉遣いや記憶はおじいさんという、なんとも不思議な設定のキャラクターです。

 

 

でも不思議とおじいさんに見えてくるんですよね、動きは機敏なんですが・・・(笑)

“わたし” を思いやる気持ちやお世話をしている姿を見ていると自然と見えてきました。

 

“わたし”が危険を冒してR氏を匿うと決めたときも、おじいさんは彼女の気持ちを汲んでサポートをします。

“わたし”に対して親同然の愛情があるからこそ、「記憶保持者」であるR氏を匿うことで危険な状況下で生活させたくない。しかし、“わたし”の気持ちにそっと寄り添い、近くから見守ることを決めたのです。

 

 

おじいさんはとある事件に巻き込まれ、舞台上でたったひとり、命の終わりを迎えます。最期の最後まで“わたし”のことを心配し、想い続ける姿が切なく、印象的なシーンでした。

 

 

秘密警察と記憶保持者のR氏

 

 

“わたし”の小説編集者であり記憶保持者でもあるR氏を演じたのは鈴木浩介さん。

役によって2枚目も3枚目も演じられる、とても役幅の広い役者さんです。

 

鈴木さんが舞台上にいることで、作品がしっかり引き締まる、そんな感覚にすらなりました。

 

 

秘密警察のリーダーを演じられていたのは山内圭哉さん。この方も鈴木さん同様、私の大好きな役者さんです。

昨年は劇団新感線「髑髏城の七人Season風」で兵庫というひょうきんな役柄を演じられておりましたが、今回も。この方にコミカルな役を演じさせたらピカイチです。

 

 

鈴木さんと山内さんが対面するシーンが1シーンだけありました。

 

誤解が解け、お互いの気持ちに素直になりたいのになれない兄弟。二人の喋り方や距離感が、もどかしさを物語っておりました。なんとも人間らしいのですが、胸が苦しくなるシーンでした。

 

 

記憶が消滅する者と記憶が残る者

 

 

R氏は匿われる生活を続けるうちに、生きる必要性や存在価値を見出せなくなっていきます。とうとう”小説”も消滅し、自らの仕事も失う羽目に。

 

運命に翻弄され、未来へ絶望していくなかで、“わたし”が彼を支え続けます。

 

 

しかし、、“わたし”に大きな変化が。消滅は体の一部にまで及んできたのです。

 

 

いつか “わたし”の全てが消滅する。

 

 

R氏はそんな“わたし”を、本来の豊かな記憶の世界へ引き戻そうと必死に彼女に語りかけます。

 

 

記憶が消滅する者と記憶が残る者。

それぞれがお互いを思いやればやるほど、見えない溝が深くなっていくようで、静かで苦しい時間が流れます。

 

 

石原さとみさんと鈴木浩介さんが、それぞれの感情描写を繊細に演じており、感情を

絞って吐く、言葉に気持ちを封じ込めて届ける、そんなふたりの会話に胸がぎゅっとなりました。

 

 

運命には抗えず、“わたし”は最期のときを迎えます。

 

 

このシーンは、彼女が横になっている隠し部屋だけがステージ上にある状態。

他の舞台装置が全て袖にしまわれ、真っ暗な空間に二人のいる部屋だけが浮かんでいるように見えました。

 

 

 

もうすぐ命尽きそうな“わたし”をR氏は抱きかかえ、行くな、まだ、行かないで。と呼びかけます。

 

でも“わたし”には運命を受け入れる覚悟がありました。

 

“わたし”が確かに生きていたという記憶はR氏のなかで生き続ける。この記憶は消滅しない。

 

だからこそ、“わたし”は運命を受け入れることができたのだと感じます。

 

 

 

 

そして彼女は消滅します。

 

 

儚い最期を迎えたあと、一番最初に消滅した“バラ”がこの島に戻ってきたのです。

 

 

バラの花びらが舞台上いっぱいに降り注ぎ、なんとも美しく幻想的な空間が広がりました。

 

 

 

 

哀しい物語のようで、人と人との心のつながりがとても温かく感じ、記憶することとは、生きるとは、一体なんなのかを考えさせられる作品でした。

 

 

 

 

想像していなかった演出

 

 

 

舞台は“回り舞台”というステージの中心に回転式の舞台を設置し、回転させながら、場面転換する装置でした。

 

 

転換中に暗転させず、話の流れを切らなくていいので、場面転換の多い作品によく用いられているなぁという印象です。

 

 

また、秘密警察の出演シーンは、歌って踊るミュージカルのようなシーンとなっており、“わたし”やおじいさん、R氏の会話劇とは全く異なる色彩で、緩急のはっきりとした演出が想像と異なりかなり驚きでした。

 

 

 

 

この作品は原作があるそうなので、ぜひ読んでみたいと思います。

 

 

 

今回、東京千秋楽公演を観劇したので、東京公演はもう終演してしまいましたが、富山・大阪・久留米公演が3月からございます。

 

 

 

皆様もぜひ行ってみてください!

 

 

 

【公演情報】

 

 

『密やかな結晶』

 

原作:小川洋子

 

脚本・演出:鄭義信

 

出演:石原さとみ村上虹郎鈴木浩介山内圭哉ベンガル、藤原季節、山田ジェームズ武、福山康平、風間由次郎、江戸川萬時、益山寛司、キキ花香、山村涼子

 

公演:

 

東京公演:2018年2月2日(金)~2月25日(日) 東京芸術劇場プレイハウス

 

富山公演:3月3日(土)~3月4日(日) 富山県民会館

 

大阪公演:3月8日(木)~3月11日(日) 大阪 新歌舞伎座

 

久留米公演:3月17日(土)~3月18日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール

 

観劇日:2018年2月25日(日)13:00公演  (東京千秋楽)

 

『スマートモテリーマン講座』を観劇した感想(ネタバレあり)

第26回目のレビューは、約5年ぶりの再演となる「スマートモテリーマン講座」です。

 

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演出家 福田雄一×安田顕の最強タッグによる公演ということでも非常に注目されております。

 

本作は、自称モテるサラリーマン“モテリーマン”が、モテるサラリーマンになるためのレクチャーを講座形式でお届けするコメディー作品です。

そして私たち観客は、モテリーマン講座の受講生となってモテ術を学びます。

 

今回の福田演出も決して期待を裏切らず、高い期待を軽々と超えていく面白さ!

パロディーしまくり、アドリブ入れまくりの全部乗せ増し増し大ボリュームでした。

 

キャラクターの濃い俳優陣

 

 

戸塚純貴演じる冴えないサラリーマン青年が、若月佑美演じる女性社員に恋をし、その恋を成就すべく奮闘する姿をモテリーマンが解説しながら話は進んでいきます。

しかしモテリーマンのアドバイスはどこか抜けていて、あまり参考にならないものばかり。ですが本人はいたって本気。全力で私たち受講生にモテ術をレクチャーしてくれます。

 

そのモテリーマンを演じたのはTEAM NACSの安田顕さん。

安田さんの個性的なモテリーマンは笑っちゃうに決まってます!

 

テリーマンのキャラクターは大ボケですから、やはりツッコミがとても重要。

 

そのツッコミ役を担っていたのはお笑いコンビ“シソンヌ”の長谷川さん。

 

私、シソンヌ大好きなんです。なので、この作品に出演されると聞いたときはとても嬉しかったですし、観終わったあともこの作品には必要な人たちだったと感じました。

 

 

もちろんシソンヌのボケ、じろうさんもかなり存在感がありました。

シソンヌの単独ライブ来たのかな?と錯覚するほど彼らが舞台上にいなくてはならない。長谷川さんのツッコミやじろうさんの変幻自在なキャラクターで笑いがどっかんどっかん起きるシーンが沢山あり、シソンヌ好きとしてはたまらなかったです(笑)

 

福田さんによる福田さんにしかできない演出

 

 

そしてなんといっても何よりも見どころは福田さんの演出!

 

突拍子もなくパロディーの要素盛り込んだり、しかもクオリティの低さがなんとも絶妙で笑ってしまうのです。

 

少年ジャ○プの某人気キャラクターや、世界的に大人気の黄色いキャラクターが大量に出てきたりと福田節炸裂です。

 

アドリブもかなり多く、結果、公演時間が予定より15分伸びてました(笑)

 

ずーっとコントを見ているような感覚になるほど笑いの止まらなかった本作。なんともサービス精神豊富な大満足の内容でした。

 

 

【公演情報】

 

 

『スマートモテリーマン講座』

 

脚本・演出:福田雄一

 

出演:安田顕、戸塚純貴、若月佑美乃木坂46)、水田航生、シソンヌ(長谷川忍・じろう)、ブラボーカンパニー(山本泰弘・太田恭輔・金子伸哉・野村啓介・保坂聡)

 

公演日:

東京公演 11月2日(木) かめありリリオホール

青森公演 11月15日(水) 弘前市民会館

北海道公演 11月18日(土)~19日(日) 道新ホール

宮城公演 11月23日(木) 仙台電力ホール

愛知公演 12月6日(水) ウインクあいち 大ホール(愛知県産業労働センター

静岡公演 12月12日(火) 静岡市清水文化会館マリナート 大ホール

東京公演 12月15日(金)~30日(土) 天王洲 銀河劇場

 

観劇日:2017年12月22日(金)19:00公演

『管理人』を観劇した感想(ネタバレあり)

第25回目のレビューは、ノーベル文学賞受賞作家である劇作家、ハロルド・ピンター作「管理人」です。

 

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日本での上演はあまり無いそうですが、代表作と言われている本作品。

 

劇場は三軒茶屋にある“シアタートラム”

客席数が200ほどしかない小さな劇場で上演されました。

舞台と客席との距離が近い、素敵な劇場です。

 

三人芝居

 

 

舞台はアストンが住んでいる部屋。遠近法を用い、奥行きを表現したセットが秀逸でした。

部屋は殺伐としていて、アストンは必要のないようなものを拾い集めては部屋に置いているそうで、物で溢れかえっていました。

 

登場人物は温水洋一さん演じる老人デーヴィスと若い兄弟、溝端淳平さん演じるミックと忍成修吾さん演じるアストンの三人だけ。

 

若い兄弟と老人とのなんとも奇妙な関係が、濃密な会話を通して描かれます。

 

世の不条理さや人間の醜さが強く描かれ、それぞれの抱えている思いが言葉の洪水となり溢れ出ていました。

 

兄のアストンはゆったりした口調で、職を失って困っていた老人デーヴィスを部屋に泊めてあげるほどの優しさを持っている青年。話し方や歩き方に特徴があり、過去に起こったとある事件によって障害を負っていることが後半明らかになります。

 

老人デーヴィスとアストンの会話はちぐはぐで、成り立ってないような、でも成り立っているような、不思議で緊張感のある空間が続きました。

 

そんな緊張感を破り、溝端淳平さん演じるミックが登場します。そんなミックもまた、老人デーヴィスと不思議な関係となっていくのです。

 

アストンとミック兄弟の関係も独特で、彼らは目が合っても会話ひとつしません。ミックが部屋に入ってくるとアストンは出ていってしまうほど。ミックはそんなアストンに対して少し不満があるようです。

 

アストンとミックはある日、老人デーヴィスに「この部屋の管理人にならないか?」とそれぞれが持ち掛けました。もちろん二人がその言葉を言った目的は異なっているのですが・・・。

 

その言葉をきっかけに、今まで何とか保ち続けていた三人の均衡が崩れ始めるのです。

崩れ始めるのは簡単だが、元に戻すことは困難。

 

それぞれの秘めた思いがろうそくのようにじわじわ溶け始め、流れていきます。

 

弱い者が弱い者をいじめている姿は見ていて心苦しい。人の弱さや醜さを感じました。

 

私たちは舞台上=部屋の中で起こっていることしか見ることができず、外の世界のことは彼らの会話からでしか読み解くことができません。彼らは頼りあうこともできず、雨が降り続いていることで外も長いこと出歩けないというような“閉塞感”を、全体を通して強く感じたように思います。

 

テンポの良い台詞が続き、同時に緩急のはっきりした三人の演技を通して、不条理劇である部分が後半強く描かれていました。逆に前半はクスっと笑ってしまうような愛くるしいシーンも沢山ありました。

 

最初から最後までたった三人しか出てこない芝居というものを初めて観劇しました。

 

しかし三人が舞台上にいた顔を合わせたシーンは少なく、老人とどちらかの兄弟の二人だけのシーンが多い印象です。

 

老人デーヴィスの長くて早口な言い回しが印象的で、ガサツで汚いキャラクターを温水さんが演じられていることにとても驚きました。あまりそういう印象がないもので・・・。

そして12月19日に発表された、紀伊国屋演劇賞にて個人賞も受賞されました!受賞された演技を目の前で観ることができて、貴重な経験をさせていただきました。

 

 

私は東京千秋楽公演をU-24チケット(東京公演のみ)で観劇しました。

U-24チケットは当日券が無いため先行申込が必要ですが、通常よりかなり低価格で観劇することができるので、24歳以下の方にはとってもおすすめです。

 

 

 

 

【公演情報】

 

 

『管理人』

 

 

出演者:溝端淳平忍成修吾温水洋一

 

 

公演日:

東京公演:2017年11月26日(日)~12月17日(日) シアタートラム

兵庫公演:2017年12月26日(木)~27日(金) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

 

 

観劇日:2017年12月17日(日)13:00公演